不動産の売買契約前に行われる重要事項の説明。
重要事項の説明は、宅地建物取引士によって行われます。しかし、短時間で淡々と説明されることも少なくありません。また、専門用語が多く、難しいと感じる人も多いでしょう。
この記事では不動産売買における重要事項の説明について、その内容や注意点を分かりやすく解説します。
重要事項の説明とは?
重要事項の説明とは、契約の対象となる不動産ついて重要な事項を宅地建物取引士が買主に対して、書面で説明をすることです。
買主に契約するかどうか判断してもらうための説明といっていいでしょう。説明する人は誰でもいいというわけではなく、宅地建物取引士が記名押印した書面を交付して説明をします。必ず契約締結前に行わなければなりません。
アパートやマンションを賃貸する場合は、こちらをご覧ください。
重要事項説明書の内容は?
では、実際に説明される重要事項説明書の内容をみていきましょう。
各種表示
物件を扱う不動産会社、説明をする宅地建物取引士の表示などを説明されます。
供託に関する事項も説明されます。不動産会社は事業を開始してから、営業保証金を最寄りの供託所に供託しなければなりません。これは、不動産業を営むにあたって、相手方に損害を与えてしまった場合に、その損害分をきちんと弁済できるようにするためです。
また、取引態様についても説明を受けます。取引態様とは、不動産会社と不動産取引をする際、どんな形態で取引をするかどうかです。仲介、売主、貸主、代理があります。
物件に関する事項
該当する物件の所在地や住所、物件の面積について説明されます。渡された資料と相違がないか確認しましょう。
土地や建物の状態について
購入する土地や建物が、どんな状況なのかということを説明されます。今後、修繕などはせず、そのままの状態で引渡しをする場合は、「現況有姿引き渡し」などと説明されます。
心配であれば、事前に物件状況確認書の記入を売主にしてもらうことをおすすめします。物件状況確認書とは、その家が雨漏り、シロアリ被害、建物の傾き、腐食や不具合、増改築やリフォームの履歴、また、騒音や振動などの近隣の状況などがあった場合、売主が買主に報告する書類のことです。これは義務ではありませんが、国土交通省でも後々のトラブル防止のため、物件状況確認書の提出することが望ましいとしています。
登記された権利について
登記された権利についてです。現時点で、誰が所有者として登記されているか、また、抵当権の設定がある場合はその旨を説明されます。
私道の負担に関する事項
私道とは、個人や団体が所有する道路のことです。建築基準法では、家を建てる際に幅4m以上の道路に接していなければならないと規定されています。4m未満の道路だと、建て替えの際に後退(セットバック)しなければなりません。
このように、前面道路が私道の場合、自分の敷地の一部を負担することを私道負担といいます。
ライフラインの整備状況
電気、ガス、水道などのライフラインも重要ですね。これらの整備状況について説明されます。
契約不適合責任に関する事項
契約不適合責任とは、不動産売買において、該当する物件が契約内容と異なる場合、売り主が買い主に対して負う責任のことです。
例えば、AさんがBさんに家を売る契約を締結し、その建物が欠陥住宅であった場合、BさんはAさんに対して、契約通りの家を引き渡すように請求したり、代金減額請求をしたり、修繕して引き渡すように請求ができます。
以前は「瑕疵担保責任」と言われていましたが、2020年4月、民法が改正され、契約不適合責任と呼ばれるようになりました。
建物状況調査を行った場合 その結果
建物状況調査を行った場合はその結果などが説明されます。
耐震診断をうけた場合はその結果や内容
旧耐震基準の建物(1981年5月以前に着工)で耐震診断をうけた場合はその結果や内容が説明されます。
耐震基準とは、地震が発生した場合、地震に耐えられる構造かどうかの基準のことです。建築基準法は1981年(昭和56年)に改正され、それ以前の建物は旧耐震基準、それ以降の建物は新耐震基準と言われています。旧耐震基準は震度5の揺れで倒壊しないことを基準としているため、震度6や7の強い地震が発生した場合は非常に危険です。そのため、耐震診断を行う場合があるのです。
代金以外の金銭の授受があった場合
売買価格の金額以外に買主から売主へ渡される金銭についてです。手付金や固定資産税清算金などがあります。
損害賠償額の予定または違約金について
損害賠償額の予定または違約金について定めがある場合は、その額や内容を説明されます。定めがなくても、その旨を説明しなければなりません。
例えば、AさんがBさんに中古住宅を売る契約をしたが、Bさんが何らかの理由により、代金の支払いができなくなってしまったとします。この状態をBさんの債務不履行といいます。
債務不履行があった場合、Aさんは債務不履行に基づく損害賠償請求ができます。ところが、損害賠償請求をするには、実際に損害があったことを立証しなければならず、時間もかかります。そこで、通常、不動産売買契約では、予め損害賠償額を決めておくのです。
ちなみに、違約金も損害賠償額と同じ意味合いで扱われています。
法令に基づく制限について
土地や建物を購入するとき、その場所によっては、さまざまな制限がされています。
例えば、建物の高さ制限があって、3階建ての家を建てることができないとか、この場所では、飲食店の経営ができないとか、あるいは、建物の建築すること自体ができないといった制限です。
土地や建物を個人や法人が好き勝手に利用したり、建物を建てたりすると日本の国土はめちゃくちゃになってしまいます。
このような事を避けるため、法律によってさまざまな規制がされているのです。代表的なのは、都市計画法と建築基準法です。
都市計画法による制限
都市計画法では市街化区域、市街化調整区域などが決められています。
市街化区域は市街化を促進する区域で、建物を建てることができます。それに対して、市街化調整区域は市街化を抑制する地域なので、基本的に建物は建てられません。
また、用途地域というものが定められています。これは、指定した用途で使用して下さい、という地域で、13種類に分類されています。
- 第1種低層住居専用地域
- 第2種低層住居専用地域
- 第1種中高層住居専用地域
- 第2種中高層住居専用地域
- 第1種住居地域
- 第2種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
例えば、第1種低層住居専用地域は、最も厳しい規制で、建物の高さ制限があったり、飲食店の経営に条件があったりします。また、低層住宅が集まる地域で、閑静な住宅街をイメージすると分かりやすいかと思います。静かな住宅街のど真ん中に高層ビルが立っている光景、見た事はないですね。また、商業地域はデパートやビル、飲食店を建築することを目的としています。
このように、その地域で決められた用途でのみ、建築が可能となります。
建築基準法による制限
この用途地域は建築基準法によって、建物の高さ、種類、建ぺい率、容積率などが定められています。
不動産を購入する場合、建ぺい率、容積率が重要で、これらも建築基準法で定められています。
●建ぺい率とは、その土地で建物を建てられる面積の割合のことです。
例えば、建ぺい率が50%と定められている地域であれば、100㎡の土地では50㎡までの建物しか建てられません。
これは建物を真上から見た場合の面積なので、1階が広い建物は1階の面積、2階が広い建物は2階の面積で計算されます。
建ぺい率については、こちらをご覧下さい。
●容積率とは、その土地で建物を建てられる延べ床面積の割合のことです。(延べ床面積とは、建物の各階の面積を足したものです。)
例えば、容積率が80%と定められている地域であれば、100㎡の土地では延べ床面積80㎡までの建物しか建てられません。
これらの項目は、不動産会社で説明してくれるはずですが、覚えておいて損はないでしょう。購入してから、思った通りの家が建てられないとか、実は建物自体が建てられない、なんてことになったら大変ですね。
容積率については、こちらをご覧下さい。
契約の解除に関する事項
契約の解除に関する事項の説明です。
契約の解除には、
- 手付金による解除
- 契約違反による解除
- 引渡し前の天変地変等による解除
- ローン特約による解除
があります。これらは重要なので、しっかり確認しておきたい事項です。
手付金による解除
手付金とは、売買契約成立後、買い主から売り主に支払われる金銭です。契約の証拠としての意味もありますし、契約解除の際の担保の目的もあります。
・説明例
買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍の額を返還して契約を解除することができる。ただし、どちらか一方が契約の履行に着手した時は手付による解除はできない。
ようするに、買主は手付金は返さなくてもいいから、解約を解除すると言えます。また、売主は受け取った手付金の倍の額を返還して、解約を解除できます。しかし、どちらかが契約の履行に着手した場合はできません。
「解約の履行に着手」とは、買主であれば、代金の全額または一部を支払った状態、売主であれば、土地や建物の引渡しや所有権の移転登記が完了している状態を指します。
契約違反による解除
・説明例
契約の当事者が契約に違反、契約不履行の場合、相当な期間を定めて催告したうえで契約を解除できる
たとえば、買主が代金を支払わない、売主が土地や建物を引き渡さないなどの解約に違反し、〇月〇日までに、売主が「代金を支払って下さい」、買主が「引渡して下さい」
と催告しても、これを履行しない場合、契約を解除することができます。もちろん自分が契約の履行ができる状態が前提です。自分が契約を履行できない状態の場合、契約の解除はできません。
引渡し前の天変地変等による解除
・説明例
引渡し前に天変地変等により、建物が滅失した場合、買主は契約を解除することができる
たとえば、引渡し前に、地震で建物が倒壊してしまった場合、買主は契約を解除できます。
ローン特約による解除
万が一、住宅ローンが不成立になった場合、解約を解除することができることを定めたものです。ローンが不成立になる場合も考えられますので、必ず確認しておきましょう。
通常、買い主側から売買契約を解除するには手付金を放棄(手付金が返還されない)しなければなりません。しかし、ローン特約があると、手付金は返還され契約を白紙にもどすことができます。
物件がマンションの場合
該当する物件がマンションの場合、次の項目が説明されます。
敷地の権利について
マンションの敷地について説明されます。
マンションは一棟の建物を区分し部屋があり、それぞれに所有権があります。これを区分所有権といいます。
また、マンションも一軒家と同様に土地の上に建てられています。その土地は誰の物かというと、マンションの住民全員の共有であったり、まったくの他人の所有地だったりします。住民の共有名義だと所有権であり、他人の物だと借地権になります。借地権の場合、地代の負担もあります。
マンションの規約について
規約の内容、駐車場利用などについて説明されます。
マンションは、区分所有権があるにせよ、一棟の建物に別の世帯が住んでいます。それぞれ好き勝手に建物や施設、駐車場などを使用していたら滅茶苦茶になっていまうため、マンションには必ず規約があります。
管理費、修繕積立金について
ロ一ンを組んでマンションを購入すると、月々の支払いのほかに管理費、修繕積立金の支払いがあります。
売主が管理費や修繕積立金を滞納している場合は要注意です。それを購入した際、買主にも支払う義務が発生するからです。必ず確認しましょう。
売主が不動産会社の場合の説明事項
不動産会社というと、仲介というイメージがあるかもしれませんが、自ら売主、貸主となることもあります。その場合の重要事項の説明として手付金等保全措置の概要について説明を受けます。
不動産会社が自ら売主となって売却する予定があり、手付金を受け取ったとします。万が一、不測の事態が生じた場合、手付金は買主にきちんと返還しなければなりません。そのため、一定の金額を超えて手付金を受け取る場合は、手付金の保全措置をとらなければならないことになっています。
その他の説明事項
その他、土砂災害警戒区域、造成宅地防災地域、津波災害警戒区域など災害リスクがある場合はその旨、アスベスト使用調査を実施した場合は、その結果などを説明しなければなりません。売り主が宅建業者の場合は、さらに説明の項目があります。
まとめ
これまで不動産売買における重要事項説明書の内容や確認、注意すべきことついて解説してきました。
-
- 物件に関する事項
- 土地や建物の状態について
- 登記された権利について
- 私道の負担に関する事項
- ライフラインの整備状況
- 建物状況調査を行った場合はその結果
- 耐震診断を行った場合はその結果や内容
- 代金以外の金銭の授受があった場合について
- 損害賠償額の予定または違約金について
- 法令に基づく制限について
- 契約の解除に関する事項
- 物件がマンションの場合について
- その他の説明事項
すでに述べたように、重要事項の説明は専門用語が多く、不動産の知識がない人にとっては、理解できない部分が多いかと思います。
また、仲介業者が悪徳不動産会社であった場合、まともな説明をせず、急ぐように契約をさせられてしまうかもしれません。
https://fudosan-kiso.cyou/43/
なので、これらの知識を少しでも持っていると、不動産という高い買い物で失敗する可能性も低くなりますし、自分を守ることもできます。
もし、あなたが不動産を購入するにあたり、重要事項の説明を受ける際に、この記事を参考にしていただけたら幸いです。
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